「水を編む」とmore treesの桝(福島)
今年も残りわずかとなりました。2023年もいろいろなことがありましたが、個人的に印象に残ったのが3月28日、坂本龍一「教授」の訃報です。20代の一時期、のめりこむように教授の音楽を聴いた経験は、私の音楽観の一部を形作っています。そこで今年の最後は、生前に教授がコラボした福島の酒蔵「haccoba -Craft Sake Brewery-」のお酒を、これも教授のライフワークのひとつである「more trees」の桝で飲んでみたいと思います。
「haccoba」は2021年2月、福島県南相馬市小高区に設立された酒蔵です。「Craft Sake Brewery」と銘打たれている通り、各家庭で多様な材料を使い、自由に酒造りを行っていた時代に着想を得て、ジャンルを超えたお酒を醸しています。そんなhaccobaさんは2022年に教授やASIAN KUNG-FU GENERATION のGotchさんが主宰する「D2021」とコラボし、お酒と音楽、ドキュメンタリー映像を制作しています。
そんなhaccobaさんの造るお酒には3つのラインがあり、「水を編む」は地元の農家さんが栽培したお米を使ったシリーズ。今回飲むシリーズ第3弾は、南相馬市原町区のあいアグリ太田さんが自然栽培で育てたコシヒカリを使用しています。さらに、「東洋のホップ」と呼ばれる「唐花草」が使われています。これは東北地方の家庭でどぶろくを仕込む際に使われていた「花酛」という製法だそうです。
そんなお酒を注ぐのは、more treesの桝です。
more treesは教授が2007年に創立した森林保全団体。地域と協働し森林保全活動や、国産材を使用したサービスや製品の企画・開発などを行っています。今回購入した桝には岐阜県産のヒノキが使われています。
それではさっそく一杯。今回はもっきりで頂きます。
香りは爽やか。優しい甘味と酸味があり、飲み口は滑らかに感じます。柑橘を思い起こしますが、味が全体的に優しく、スポーツドリンクに近い味わいでしょうか。和食は元より、軽めのフレンチやイタリアンとも合わせられそうな、どこの国ともつかない味わいです。
桝から口にするとヒノキの清々しい香りが加わり、体の中が清浄になる気がします。神への捧げものでもあるお酒は、身近でありながら特別な飲み物であることを感じます。一年の節目に相応しい飲み方かも知れません。
2023年も残りわずか。教授の音楽を聴きながら一年を振り返ってみたいと思います。今年もお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
水を編む -あいアグリ太田-
品目 | その他の醸造酒 |
原材料名 | 米(福島県産) 米麹(福島県産米) 唐花草 |
精米歩合 | 88% |
原料米生産者 | 農業組合法人あいアグリ太田 |
アルコール分 | 11% |